学校法人桜水会 土浦看護専門学校

「専修学校リカレント教育総合推進プロジェクト」事業成果報告書 学び直し講座による潜在看護師の復職支援モデル事業

事業背景

看護師の2025年問題と潜在看護師

厚生労働省によると、平成28年末時点における看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)の就業者数は、約166万人となっている。団塊の世代が後期高齢者となる平成37年(2025年)には、看護職員は196万人~206万人必要であるとされている。就業者数は年間平均3万人で推移しているが、このペースで今後増加していっても、平成37年には3万人~13万人が不足すると考えられている。※1

一方、看護職員の国家資格を保持していながらその職に就いていない者、即ち潜在看護職員は、平成22年末時点で約71万人いるとされている。※2 この潜在看護職員の1~2割が復職すれば、平成37年の不足数をカバーできる。

※1 厚生労働省 看護職員確保対策
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525.html 平成30年6月閲覧

※2 厚生労働省 看護師等免許保持者の届出制度
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095486.html 平成30年6月閲覧

看護師等免許保持者の届出制度と潜在看護師の復職支援の課題、学び直しが進んでいない原因

看護職員のうち就業している者については、2年に1度、「業務従事者届」が保健師助産師看護師法に基づき義務付けられている。ところが、就業していない者、即ち、潜在看護師についてはその実態を把握する仕組みがなかった。そこで、平成27年10月1日に改正・施行された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」により、潜在看護職員は連絡先等の情報を、都道府県の「ナースセンター」に届け出ることが努力義務と定められた。これにより、都道府県ナースセンターは、届け出られた情報をもとに潜在看護職員とつながりを保ち、求職者になる前の段階から、個々の状況に応じて復職への働きかけを行うことができるようになった。

この届出制度による届け出がなされた人数は、届出制度が始まった平成27年10月から11月の2ヵ月間で合計5,441人となっている。※3 このことから、潜在看護職員の数に比べて届出数が少なく、都道府県ナースセンターによる個々の状況に応じた復職への働きかけは十分に効果を発揮していないと言える。さらには、この復職への働きかけに復職のための学び直しも含まれることも予想される。即ち、潜在看護職員の届出制度が十分に機能していないため、学び直しも進んでいないということが考えられる。
※3 厚生労働省 看護職員確保対策について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000107369_11.pdf

潜在看護職員の学び直しニーズ

ここで、潜在看護職員の学び直しに関するニーズについて確認しておきたい。宮崎県の西諸地域(小林市、えびの市、高原町)を対象とした地域を限定した調査ではあるが、学校法人宮崎総合学院が平成27年度文部科学省 成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業 「看護師の新しい職域に参画する女性の学び直しキャリア教育プログラムの開発と実証」において実施した看護師に対する復職・キャリアアップ等に関する意識調査によると、離職経験のある看護師が復職する際にあると良いと思う支援の内容について、「専門技術の再訓練」(128件)、「復職支援について相談できる相手の設定」(122件)が多く回答されている(回答総数399件、上位2つまで回答)。このことから、潜在看護職員のニーズに合った教育環境が十分でないこと、及び、復職に関する相談相手が身近に少ないことがわかる。これも、潜在看護職員の学び直しが進んでいない原因として考えられる。

eラーニングを活用した学び直し講座の必要性

先述のような課題解決のために、eラーニングを用いた時間・場所にとらわれない学習環境と、集合学習やSNSによるコミュニティ機能によって学習内容や復職に関することなどを自由に相談し合える環境とを組み合わせた学び直し講座により、復職意欲の喚起から専門知識・スキルの向上、復職やキャリア形成支援までを一貫して行う取組が必要となる。

そこで本事業では、現場復帰意向のある潜在看護師の円滑な復職を支援する教育プログラムを開発・実施し、専門学校が潜在看護師の掘り起こしと女性の社会参画を促進するモデルを提案することを目指した。